「そういえば、最近、金物屋のラッキーちゃん、見かけないね」
ビーグル犬のラブちゃんが言いました。
「…ああ、金物屋さんは、ちょっと前に店を閉めちゃったんだよ。だから、ラッキーちゃんも、ご主人様と一緒に、田舎に引っ越したんだよ。慣れない土地で、縄張り争いとか、めんどくさいって」
シロちゃんは、ドキンとしました。
――そうかぁ。田舎に引っ越ししたのかぁ。
「最近、ずっと赤字だって、ラッキーちゃん心配していたんだけどね」
事情通のゴロウちゃんが続けて言いました。ゴロウちゃんの酒屋さんも、ディスカウントスーパーができて以来、すっかり客足が少なくなってきていて、他人事ではないようです。

シロちゃんやゴロウちゃんの複雑な心境にはまるで頓着しない様子のクロちゃん。中腰になると、メニューをふりふり、大きな声で聞きました。
「ねぇねぇ、この きまぐれ豆腐サラダってやつ、いっとく? 1つでいい? あと、子持ちシシャモ頼んでもいいかな?」
「あたし、魚はきらいよ」
コーデリアちゃんが、不機嫌そうに言いました。

そろそろお開きの時間になりました。
「おあいそっ! お願いねっ!」
クロちゃんは、シュウマイの臭いのするゲップをひとつしました。
向かいに座っていた、ミニチュアダックスフンドのクッキーちゃんは顔をしかめましたが、クロちゃんは気がつきません。
「えーと、今日は7匹の参加があったから、7等分だね。だれか計算できる人、いない? こういうの苦手なんだよね。ぼくサ、ホラ、食べたり飲んだり専門だから」
クロちゃんは、うれしそうに一人でクツクツと笑います。
――あたし、ウーロン茶しか飲んでいない。クロちゃんは、いっぱいお酒飲んだのに。割り勘なんて、嫌だわ。
マロンちゃんは思いましたが、口には出しませんでした。
酒屋のゴロウちゃんが、鉛筆をなめなめ、
「えーとっ、女の子は1500円。男はぁ、2000円っ」と言ったので、マロンちゃんは、少しほっとしました。
シロちゃんは、ご主人様が渡してくれた包みから1000円札2枚を取り出すと、半紙をまた同じように丁寧にたたんで、ポシェットにしまいました。
ラブちゃんは、
「このフライドチキンの骨、持ち帰りしたいんですけど?」
と、お店の人に頼みました。

店の外は、すっかり冷え込んでいました。
「早くあったかくならないかなぁ」
だれかが言うと、
「あったかくなると、フィラリヤがなぁ」
と、他のだれがが言いました。

「また、いい店探しとくよ」
クロちゃんは、別れ際には、いつもそう言います。でも、会合は、いつも同じあの店なのでした。
疲れ気味の6匹をよそに、クロちゃんは、まだまだ元気いっぱいです。
「次は、エスニックとかどう? あーっ、今日は楽しかったなぁっ、星がきれいな夜だなぁっ」
クロちゃんは、満足そうに言いました。


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